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GOOD LIFE フェア2024

インタビュー出展者に聞きました

2023.07.01

健康&ビューティ

個性を楽しめる世界へ 立ち上がったビューティーブランド

ロレアル パリ(日本ロレアル)


「ストリートハラスメント」という言葉をご存じだろうか。公共の場でのセクシャルハラスメントのことだ。体を触ったり、服装や体格をからかったり。あるいは、連絡先をしつこく聞き出そうとする、じろじろ見るといった、相手に不快感を与える性的な行為が含まれる。こうしたストリートハラスメントを経験した日本人女性は、60%に上る。また、35歳以下の女性に限れば、73%もの人が被害に遭ったことがあるという(*)。

実際にストリートハラスメントに遭ったとき、あなたならどうする? 目の前で被害に遭っている人がいたら――?

こうした問いかけを通じてストリートハラスメントを自分事化し、いざというときのために安全な対処法を学べるのが、オンラインプログラム「スタンドアップ」だ。世界100カ国以上で展開するトータルビューティーブランド「ロレアル パリ」が、NGO団体Right To Beとともに提供している。

「あなたにはその価値があるから(Because you’re worth it)」というおなじみのスローガンとともに、50年以上にわたって女性をサポートし続けてきた「ロレアル パリ」。ブランド統括の菊池裕貴さんは「ストリートハラスメントは女性の尊厳を奪い、身の危険を感じさせ、プライドを傷つけるもの。私たちのブランド理念とは対極にある」と話す。

もちろんセクシャルハラスメントは、女性に限らず全ての人に関わる問題だ。「多様性や個性は当然、尊重しなくてはいけませんが、被害に遭う方は圧倒的に女性が多い。性の多様性が広がる中、むしろジェンダーという根本的なところがないがしろにされていないか、という問題意識がありました」


「スタンドアップ」は2020年3月にフランスで始まり、これまで全世界で150万人以上(2022年末時点)がトレーニングを受けている。日本では2021年11月に始まったが、菊池さんたちは当初、日本でこのプログラムをやるべきかどうか、1年以上悩んだという。

背景には日本特有の“事情”がある。「日本ではセクシャルな問題がタブー視されがちで、何か起きたときも被害にあった女性の方に非があるという意見が少なくない。行為をハラスメントと認識する基準が、欧米に比べて高い傾向があります」。加えて、セクシャルハラスメント自体をネタにして茶化す社会の空気、被害者にとって忘れ去りたいであろう経験をフラッシュバックさせるのではないか、というセンシティブなテーマに取り組むためらいもあった。問題に取り組む企業が、逆に非難を浴びるケースもある。

「でも、動かないと社会は変わらない。最終的には、50年以上ぶれずに女性のエンパワーメントを後押ししてきたブランドとして、絶対に逃げない、目をそらさない、と腹をくくりました」

プログラムはいま、イベントや企業の研修、学校の講演などで活用が広がっている。

大切にしているのは、参加者に自分事として考えてもらうこと。そのため、たとえば大学の講座では、サークルの飲み会でのハラスメントを例にグループワークを実施する。学生たちからは、目の前の人を助けるため「お酒をわざとこぼして注意をそちらに向ける」といった具体的なアイデアが次々と出てくる。

一方で、「何もしてあげられなかった」と過去の経験を悔いる学生も。そんなときは、「恥ずかしかったから」「ハラスメントかどうかわからなかったから」など、関われなかった理由を言語化し、別の方法がなかったかを深掘りしていく。それが「次」につながっていくからだ。

3月に名古屋で開催された「マラソンEXPO」でのブース

菊池さんには、受講者に必ず伝える言葉がある。「最終的に関われなくても、自分を責めないで」

大切なのは、個々の判断をリスペクトすること。「まず、何かアクションを起こさなければと思った自分の勇気を褒めて欲しい。そして、次に同じようなことが起きたらどうすればいいのか、と考える機会にしてもらいたい。自分で考えることが何よりも重要なのです」

ロレアル パリは2023年末までに、日本で1万5千人の受講をめざしている。

思い描くのは、「自由に個性を楽しめる社会」だ。たとえば、痴漢をされないために露出を避け、スカートをはかないようにすること。身を守るために、本来したい振る舞いを我慢すること。そんないくつもの「制限」がなくなり、全ての人が自分らしくいられる社会へ――。一人ひとりの行動が束になり世界を変えるそのときまで、ロレアル パリは声を上げ続ける。

(*)データはいずれもロレアル パリとIPSOSの調査による