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GOOD LIFE フェア2024

インタビュー出展者に聞きました

2023.08.21

地域の魅力

ふるさと納税が育むコシヒカリ おいしく食べて農家を応援

岡山県吉備中央町


「日本一お得!」と話題になった岡山県吉備中央町のふるさと納税。返礼品として地元産コシヒカリがもらえ、寄付金は米農家の支援に充てられる。いまも全国から寄付が相次ぐ人気の理由は何なのか。そして、地元農家への効果は?

「晴れの国」岡山のなかでも、標高200~500メートルほどの高原地帯にある吉備中央町。穏やかで冷涼な気候を生かした農業が盛んで、ピオーネやブルーベリーといった果実、白菜など自慢の特産品を数多く取りそろえる。

コシヒカリを返礼品にしたのは、およそ10年前のことだ。寄付金が伸び悩み、返礼品のてこ入れを図っていた時期だった。足元を見つめ直してみると、町の全5100世帯(人口1万人あまり)のうち、兼業農家を含めると約4分の1が米作りに関わっている。また、米の作付面積のうち約7割をコシヒカリが占める。

当時、返礼品としてコシヒカリを扱う自治体は、全国でもそれほど多くはなかった。そこで、寄付1万円の返礼品を「20キロのコシヒカリ」としたところ、ネットや口コミで「日本一お得なコシヒカリ」と話題に。1年目の2014年度に約1億円(5766件)が集まり、翌年には3億7500万円(1万6832件)へと急増した。

その後、「返礼品の価格は、寄付額の3割以内」というルールができ、1万1千円につき15キロへと変えたものの、寄付は順調に伸び続けた。2021年度には、コロナ禍の巣ごもり需要もあり、11億3300万円(3万2178件)と過去最高額の寄付が集まった。


支持されている理由は何だろう。吉備中央町・協働推進課の石坂晃則さんは「リピーターを増やす努力と、コシヒカリのブランド力ではないか」と話す。

吉備中央町の返礼品がユニークなのは、寄付した人が希望する時期にコシヒカリを届けてもらえること。各家庭によって異なる消費ペースに柔軟に対応できることから、反響は大きい。

また通常、米を返礼品にする場合、ほかの品種とあわせて「食べ比べ」や「ブレンド米」にすることが多い。1品種だけに絞ると、量を確保できない恐れがあるからだ。

しかし、吉備中央町はコシヒカリの作付面積が極めて大きい。以前はヤマビコという品種が多かったが、収穫が10月中下旬でちょうど台風の時期に重なるため、風水害を避けようと収穫が早いコシヒカリに切り替えてきた。「単なる『お米』でなく『コシヒカリ』のなので、アピール力があったのだと思います」と石坂さんは語る。

寄付の受け付けは、新米ができる半年前の3月末に始まる。町の職員は11人で、農家との調整や、町の特設ホームページの運営、事務作業に追われる。一度寄付をしてくれた人とのつながりを大切に、お礼状や年賀状の送付など、寄付者との継続的なコミュニケーションを続けている。


中山間地域の町では、全国的に人口減と高齢化が進んでいる。「体力的に楽になるから本当は田植え機やコンバインを購入したいが、一定の時期にしか使わないものにはなかなか手が出ない」という高齢の農家も少なくない。また、山際の田んぼが多いため、イノシシやシカの被害も出ている。繰り返し荒らされると、「もう米作りをやめよう」となってしまう。

寄付金は、農機具の購入や害獣から田んぼを守る電気柵を設置する際の補助、農家への支援金などに充てられる。石坂さんは「一生懸命つくれば売れるというのは、農家にとって大きな励みです。(集まった寄付が)『もうちょっと頑張ってみよう』と農家の背中を押すものになっています」と話す。吉備中央町のコシヒカリは、まさに「ふるさと納税が育てるお米」といえる。

町では最近、20代から30代の若手数人が担い手となり、農地を増やして米づくりをやってみようと意欲を見せている。親が高齢になり代替わりのタイミングということもあるが、いい米をつくって工夫すれば売れるという希望が出てきたからだ。

10年目の節目にあたる今年度の寄付金は、6月末ですでに6億円を超え(受け付けベース)10億円を超えそうな勢いだ。石坂さんは「多くの方々に知ってもらって協力してもらえるよう、吉備中央町のふるさと納税、コシヒカリをしっかりとアピールしていきたい。農家を元気に、そして町を元気にしていきたいと思っています」と語る。