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インタビュー

2022.08.17

SDGsマーケット

その「せんたく」が環境を守る 町工場が出会ったMgの可能性

洗たくマグちゃん

商品に親しみを持ってもらうため販売を始めた「アザラシ親子 バスマグ」を手に持つ宮本隆社長

日々のくらしに欠かせない衣服の洗濯。それが環境にどんな影響を与えうるか、立ち止まって考えたことがある人は多くないかもしれない。

洗濯機を1回使用する際に使われる水量は50~100リットルなどと言われ、流される排水には汚れや洗剤の成分が含まれる。洗濯や乾燥の過程で電気が使われ、二酸化炭素も排出される。

「何げない洗濯習慣でも、環境への負荷は決して決して小さくありません。それをちょっとだけ意識し、ポジティブに関われる選択肢を知ってほしい。そんな願いで『マグちゃん』を提案しています」と語るのは、宮本製作所(茨城県古河市)の宮本隆社長だ。

「マグ」とは、マグネシウムのこと。「洗たくマグちゃん」は、メッシュ状の袋に高純度のマグネシウムの粒を詰めた洗濯補助用品だ。使い方は簡単で、洗剤の代わりに洗濯機に入れるだけ。水がマグネシウムに反応して弱アルカリ性に変わり、洗剤を使わずに水そのものの力で汚れが落ちやすくなるという商品だ。

紙パッケージにリニューアルした「洗たくマグちゃん」

化学物質を含まないため、排水による環境負荷を減らせる点を同社はアピールする。洗浄効果としては、加齢臭やタバコ臭といったにおいをとるのにおすすめといい、「汚れの目立たない衣服に、たくさんの洗剤を使う必要はありません」と宮本社長。昨年からはパッケージに紙素材を採用するなど、脱プラスチックの取り組みにも力を入れている。

1965年創業の宮本製作所は、自動車部品の加工を担う町工場として始まった企業だ。2代目の宮本社長はあるとき、知人の工場が扱うマグネシウム合金の素材に触れ、他の素材にない軽さや振動吸収性といった機能性に驚く。それ以来、「マグネシウムの可能性を追求すること」が事業の柱になった。

はじめは企業向けにマグネシウム合金を活用した工業用部品などを製造していたが、2000年代以降、マグネシウムの力を消費者へも訴求する狙いで「マグちゃん」の開発がスタート。環境問題に貢献したい思いも重なり、工場で試作や実験を繰り返したという。

視点を変えると、マグネシウムは植物が光合成するのに必要な葉緑素を作る成分でもある。これに着目した同社は、各地の大学や農家と連携して「マグちゃんによる洗濯排水を農業用水として転用する取り組み」にも挑んでいる。2021年までに、この事業に関する国際特許も国内外10カ国で取得。また「洗剤を使わないコインランドリー」も全国50店舗ほど運営し、環境に優しい洗濯習慣の仕組みを構築しようと手を打ち続けている。

連携する茨城県つくば市の農家「ベルファーム」ではマグネシウムを使ったもみ殻堆肥の研究開発に取り組んでいる

「企業として洗濯用品を扱うようになったことで、『水』に真剣に向き合うようになりました。食料を安定生産し、人類を守るためにも水は欠かせませんから。マグネシウムの力を通じて次世代に貢献する企業になりたいと、社員みな真剣に取り組んでいます」(宮本社長)