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インタビュー

2022.08.18

GOOD FOOD&CRAFT

素材にこだわり、被災した水産加工業者の生きる道

復興水産加工業販路回復促進センター

千葉県銚子市の銚子漁港に停泊するサバ漁漁船

サバの缶詰で味の差はどこで決まるかご存じだろうか?

答えは、想像通りと言うべきか、拍子抜けするほどシンプルだ。「調味料の配合で差は出にくい。サバの脂ののり具合で品質が決まります」。魚類缶詰製造で操業60年を数える高木商店(茨城県神栖市)の豊島光伸さんが教えてくれた。

わかってはいても、年中水揚げされるサバの中で、脂ののったサバだけを厳選するとなれば、生産者の素材へのこだわりがなければできない。日本一の水揚げ量を誇る銚子漁港に程近い高木商店の主力商品「寒さばシリーズ」は、まさにそれを体現したものと言っていいだろう。

1日10万缶以上の製造が可能な高木商店の生産ライン

回遊魚である太平洋のサバは夏場になると北方の海でえさを食べて脂肪を蓄え、秋になると南下する。その時期に狙いを定め、同社は寒サバの水揚げ期である11月から1月にかけて1年分をまとめて買い付ける。原料は冷凍保存するので、年間を通じて「おいしいサバ缶」の製造が可能になるというわけだ。

素材を生かすという点では末永海産(宮城県石巻市)も負けてはいない。同社が誇る「牡蠣の潮煮」は塩や水を使わず、三陸の海でとれた牡蠣から出る潮だけで煮込んだ自信作だ。

海抜ゼロ地帯にある工場は2011年3月の東日本大震災による津波で水につかった。原料も製造機械も失い、一時は会社を解散したが、社員3人で再出発。震災を機に失った量販店や問屋向けの販路回復を進める一方で、一般消費者向けの商品開発にも挑んできた。

手早く牡蠣むきをする末永海産の従業員たち

震災直後に入社したという小山剛史さんは「自社らしさをどう打ち出すか。試行錯誤を繰り返すなかでたどり着いた答えは、『何も足さず、何も引かず、素材のうまみだけを生かした商品づくり』だった」と話す。

震災から11年。水産庁が昨年12月から今年1月にかけて調査したところによると、被災6県で震災前に比べ「8割以上回復」と回答した水産加工業者は49%にとどまった。復興道半ばのただ中で、海の恩恵を受ける私たちも、できることを今一度考えてみたい。

◇出展ブースには上記2社のほか、石渡商店(宮城県)、おのざき(福島県)、元正榮北日本水産(岩手県)、兆星(千葉県)、宮古マルエイ(岩手県)が出品します。