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GOOD LIFE フェア2024

インタビュー出展者に聞きました

2023.07.21

GOOD FOOD&CRAFT

お米は嗜好品へ 味も、産地の魅力も、サブスクで楽しむ

パナソニック/くりや


日本人が米を食べなくなったと言われるようになって久しい。でも、甘みや風味が異なる銘柄米が全国各地で作られている。おいしいご当地米を多くの方々に味わってほしい。そんな思いが重なり、家電大手「パナソニック」と、老舗の米穀小売・卸売会社「くりや」がタッグを組んだ。

米とパナソニックのかかわりは、実は長い歴史がある。パナソニックの前身、松下電器が電気炊飯器を生産し始めたのは1956年。高火力で炊きあげるIHジャー炊飯器を、業界に先駆けて1988年に開発した。

家庭でおいしい米が炊ける炊飯器の開発では、米の特性を科学的に分析するだけでなく、生産者の意見を反映させている。「まだ銘柄の良さを引き出せていない」「もっとおいしくなる」。水加減、火力や圧力、蒸す時間など、生産者の求めに応じて一つひとつ調整し、甘みや風味、硬さの最適なバランスがとれる炊き方を追求してきた。現在は63銘柄に対応できる炊飯器も扱う。

炊飯器の技術開発で最先端を走り続けているパナソニック。だが、担当者の一人、くらしアプライアンス社キッチン空間事業部の大宮広義さんは、数年前に抱いていた、意外な思いを打ち明ける。

「心のなかで葛藤があった」


テレビ事業に長く携わってきた大宮さんがキッチン家電を担当する部署に移ったのは2018年ごろ。販売イベントで、各地の電器店を訪れて回った。当初は、50を超える銘柄に対応できる炊きあげ機能について胸を張って説明していたが、次第に気になることが出てきた。「これだけたくさんの銘柄、お客様にはどうそろえていただけばいいのだろうか」

一般家庭では、スーパーなどで米を買う時、5キロや10キロの袋を手に取ることが多い。店先に置いてあるのは、5銘柄ぐらいが一般的。だいたい毎回、同じ種類を選び、違う銘柄を選んだとしても、食べきるまでは別の銘柄は試しにくい。「炊き分け機能を存分に楽しんでいただくには、商品だけではだめなんじゃないか」

もっと気軽に色々な銘柄米の食べ比べができるサービスを実現できないだろうか。同僚に提案すると、反応は悪くない。だが、パナソニックで米を取り扱う部署はない。食材を扱う企業に企画を提案してみたが、反応はいま一つ。声かけ先を広げるなかで、かつてつき合いがあった一つの会社を思い出した。

1882(明治15)年創業の米穀小売・卸売会社「くりや」。香川県に本社を構えるが、47都道府県すべての銘柄をそろえ、2合などの少量パックをインターネットで販売している。徳永真悟社長は、日本炊飯協会認定の「ごはんソムリエ」として自ら現地に足を運び、試食などをしたうえで買い付ける。季節限定や地域限定といった希少性のある米も少なくない。真空パックで鮮度をキープさせる技術も持っていた。


「食べきりサイズで様々なお米を食べられる。そんな新しい体験を、炊き分け炊飯器と全国の銘柄米を組み合わせることで、お客様に提供できるのでは」(パナソニック)

「炊き分け機能は、米の産地や品種の特徴を引き出し、生産者の思いと魅力を伝えようとする信念を感じる。その思いを一緒に伝えられることにワクワク感がある」(くりや)

2020年、2社で商品化に向けて本格的な協業が始まった。パナソニックの開発現場に数十種類もの米を持ち込み、試食を重ね、銘柄米に合う炊飯プログラムをつくりあげた。21年6月、炊飯器と小分けの銘柄米を毎月届けるというサブスクリプションの商品「foodable(フーダブル)」がスタートした。


こしひかり、ななつぼし、つや姫、森のくまさん……。ラインナップは季節によって変わるものの、くりやが選んだ40以上の銘柄からユーザーが食べたい米を選ぶと、2合入りパックで自宅に送られてくる。レンタルした炊飯器で銘柄にあった炊き方をセットすると、おいしい米が炊きあがる。

「毎月楽しみに、お米の食べ比べをしています」「2合ずつパックされており、ちょうどいい量でお試しにはもってこいです」。ユーザーからは好意的な声が寄せられる。

米の味や風味は、土壌や水質でも変わってくる。大宮さんは米に向き合う思いをこう語る。「究極的には、料理にあわせて素材の味が引き立つお米を選んでほしい。例えばワインのように、この料理にはこの銘柄が合うという感じで、お米を楽しんで欲しいですね」