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GOOD LIFE フェア2025

インタビュー出展者に聞きました

2023.08.23

健康&ビューティ

肌触りを追求した“裏返し”製法 暮らしに寄り添う靴下を

With Knit


色柄が気に入って買った靴下なのに、履いているうちにかかと部分が甲の方に回ってしまって……。こんな“残念な靴下”、経験したことはないだろうか。

実は靴下のかかと部分には、メーカーの技術が詰まっている。かかとの曲線にフィットする形状や編み方はもちろん、糸の伸縮性を計算し、縦横それぞれ何センチの伸び幅にするか、最適な加減を見極める。ゆる過ぎず、締めつけ過ぎず。このバランスがうまくいって初めて、足にピタッと沿うフィット感が生まれる。

こうした技術とともに半世紀以上、靴下を作り続けているのが、奈良県大和高田市のメーカー株式会社西垣だ。靴下に限らずタイツやレッグウォーマーなど、筒状の様々なニット製品を手がける。現社長の西垣祐希さんが2021年10月、3代目として父からバトンを受け継いだ。

それまではOEM100%で、生協や百貨店、スポーツ用品店に卸す商品を作ってきた。社長になった西垣さんが取りかかったのは、自社ブランドの立ち上げだ。「メーカーにとって大切なのは、工場の技術者たち。彼らの地道な積み重ねがあって初めて商品が出来上がる。そこにやりがいを感じてもらうため、自社の商品をお客様が使っているというストーリーを、直接社内に落とし込みたい、と思いました」


どんな靴下をつくろうか。5人のメンバーが1年間会議を重ねるうち、定まってきたのは「天然繊維を使った商品をやりたい」という方向性だ。さっそく、シルクを使ったサンプル品を作ったが、それを見た西垣さんが放ったのは意外な一言だった。

「これ絶対、表裏ひっくり返した方が滑らかやんな」

ふと思い出したのは、数年前、検品のときに感じた“違和感”だった。検品では、編み目の乱れやほつれがないか、一足一足に目を光らせる。表面を確認したら、次は裏面。西垣さんが靴下を裏返そうと腕を差し入れたとき、表裏がひっくり返った状態の方が腕の出し入れがスムーズだと気づいた。「腕がスルッと入っていくということは、すべりがよく肌当たりが良いということ。丈が長いものほど、感覚の違いは明らかでした」

なぜ、肌にずっと触れる裏面よりも、表面の方が滑らかなのか――。「これを生かしたブランドが出来たら面白いと、そのときは漠然と思っていました」


さっそく表裏を反対にしてサンプルを作ってみたが、次にネックになったのは見た目。履き口にあるゴムの下の「ボテッとした糸の感じ」が、デザインというよりも、どうしたって「表裏を間違えて履いている」ように見せてしまう。そこで、糸の収縮性や、色の切り替えを複数パターンで試し、少しずつ納得のいく形に仕上げていった。そして2023年2月、「裏返しソックス」としてECサイトでの販売をスタートした。

現在は、靴下に加えて、「腹巻きパンツ」や「一分丈スパッツ」も取りそろえる。開発には、全盲の知人に裏返しソックスを試してもらったときの「足よりも手の方が肌触りの違いを感じやすい」という感想がきっかけになった。内ももやお腹といった肌が敏感な部位でこそ、「裏返し」の良さをより感じてもらえるのではないか、と考えたからだ。腹巻きパンツもスパッツも、肌に当たる面にはシルクを使っている。

さらに、幼児用の靴下も開発中だ。これも「赤ちゃんの足指に、靴下の糸くずが絡んでしまうことがある。赤ちゃん用の裏返しソックスはありませんか?」という親の声が出発点だ。

ECサイトには、客と一緒に新商品を生み出すための仕掛けとして、「こんな靴下があったらいいな」というアイデアを募る投稿フォームを設けている。商品化されれば、最初の1足を販売前にプレゼントする特典つきだ。

「『裏返しソックス』の枠にとらわれず、いろんな人に寄り添ったデザインを作りたい。そのためにも、いろんな方にインタビューをして、その方々のライフスタイルに、我々のニット技術でどう寄り添えるかを考え続けていきたい」と西垣さん。ブランド名の「With Knit(ウィズニット)」には、そうした作り手の願いが込められている。