
鮮やかなルビー色の葉からレモンの香りを醸す、一風変わった赤紫蘇の品種「リモチーソ」。2025年の大阪・関西万博で、この日本発の赤紫蘇を原料として作られたハーブティーやクラフトジンに、世界の来場者から高い関心が寄せられた。
研究のスタートから新品種として登録されるまで、実に27年。京都大学とシミックホールディングスによる共同開発で生まれた世界唯一の紫蘇の品種だ。薬用植物栽培を地域の取り組みとして力を入れる北海道蘭越町との間で連携協定が結ばれ、ニセコ連峰のふもと、人口約4500人のまちで大切に栽培されている。
このような、他にない魅力と物語を持つ資源が、全国各地にまだたくさんある。けれど、それらが私たちの暮らしに届くまでにはいくつもの壁がある。日本の国土の約5割を占める「振興山村」と呼ばれる山村地域は、森林面積の約6割を占め、農林水産物の供給や水源の涵養など暮らしを支える重要な役割を担う一方、人口減少と高齢化が他の地域より速いペースで進んでいる。いくら品質が良くても、人手不足や交通の不便さから地域の外へ届けることが難しい。地域の魅力は、つくるだけでは伝わらないのだ。
こうした課題に向き合い、山村の資源を掘り起こして全国や世界へ届ける取り組みが、農林水産省が約10年前から推進している「山の恵みプロジェクト」だ。全国734市町村の振興山村を対象に、地域資源を活用した特産品の開発から販売促進までを一貫して支援している。リモチーソが大阪・関西万博で世界にアピールするチャンスを得たのも、このプロジェクトの後押しがあってのことだった。

プロジェクトの特徴は、「魅力的なものづくり」だけで終わらない点にある。商品のアイデアをビジネスプランに落とし込むセミナー、専門家と二人三脚で進める商品開発、企業のバイヤーやシェフが集まる商談会など、あらゆる段階で手厚いサポートが用意されている。
今年度は、ユニークな取り組みとして一流シェフとのコラボレーションも行っている。シェフが食材の隠れた魅力を引き出し、新しいレシピを提案することで、「ただ品質が良い」だけの商品に物語が加わり、我が家でも試してみたい、と思える特別な意味が生まれる。
農水省から補助を受けプロジェクトを担う東京促成青果の影山恭英さんは、「品質の良い製品は世の中にあふれていますが、人々の生活でどう使えばもっとも喜ばれるか、ターゲットをイメージして、利用場面を的確に企画提案できているものは多くありません。その”あともう一歩”をプロデュースすることが、多くの人に届ける鍵だと思います」と話す。
イベントや商談会の場では、作り手たちが消費者やバイヤーの生の声に触れる。「おいしい」「これいいね」という反応は、山村で暮らしながらものづくりに取り組む人々が自分たちの仕事に誇りを持つための大切な機会にもなっている。「生活者が楽しい体験や交流を深めることで、笑顔の連鎖ができて、ファンづくりにつながっていくことを期待しています」

GOOD LIFE フェア2026には「山の恵みプロジェクト」の支援を受けて成長する様々な商品が一堂に紹介される。山形県金山町からは、冬を通じて積もる雪の下で育ち、濃厚な甘みを蓄える地元産の落花生を使ったピーナッツのご飯のもとやペースト。福井市からは、山間の土地で約30年前に開湯した「伊自良温泉」の水を使った化粧水や、伝統の野菜「河内赤かぶら」を練り込んだパウンドケーキ。他にも山梨県早川町の鹿肉を使った味噌煮・大和煮・カレー煮の缶詰や三重県伊賀市のクラフトジン「これ、曰く。酒じん KAWAKITA」、岡山県新見市のロゼワイン「2023 Aki Queen(アキクイーン)/ロゼワイン」や黒毛和種の地域ブランド「千屋牛」の干し肉など――。各地の風土と人の手が重なり合って生まれる、他にない特産品に出会うことができる。
地域から届けられた商品を一つ選び、家庭で味わうこと。実はそれが「おいしい」以上の価値を持っているとしたら。日本の森や水源を守り、豊かな自然を未来へつなぐ選択として、お気に入りの逸品を選んでみたい。

