トマトケチャップやトマトジュースの国内シェアでトップを走るカゴメ。創業125年を迎えた老舗企業は「トマトの会社から、野菜の会社に」というビジョンを掲げ、野菜をとる食生活の豊かさを提案している。
そのなかで、大豆や野菜を使うレトルト食品の「プラントベース」シリーズは、同社が力を入れるブランドのひとつだ。今年、スープ2品が新たに加わった。
2種類の豆のごろっとした具材と、チポトレ(唐辛子の燻製)が癖になる味の「ごろっとお豆のチリトマトスープ」。そして、ごろっとした根菜の満足感と、10種のスパイスで後引くおいしさを実現した「ごろっと根菜のスープカレー」。いずれも、内容量が250グラムと食べ応えがある。
「20~40代の女性をターゲットにしています。忙しいときにレンジで温めるだけで具沢山のスープを食べていただけます。野菜も一食分を使っていてヘルシーなスープとして定着を狙いたい」と話すのは、カゴメのマーケティング本部食品企画部の稲葉洸貴さんだ。
日本人は野菜の平均摂取量が290gほどと言われており、厚生労働省が推奨する350gからは不足している現状だ。そんななかで、「プラントベース」シリーズは個食として手軽に野菜を摂取できることも魅力の一つになっている。シリーズでは野菜と豆でできたカレーとパスタソースなど、すでに8品が商品化され、これで計10品となった。
野菜や豆で出来たカレー。そう聞くと、物足りないのでは? 美味しくないのでは?と感じる人もいるかもしれない。しかし、稲葉さんによると、大豆ミートのキーマカレーは食べた人の85%がおいしさを実感してくれたというデータ(*)もあるといい、その味に自信を持っている。
(*&KAGOMEアンケート:2023年7月28日~31日に、20~60代男女20名を対象に実施した味覚アンケートで「おいしい」「まあまあ美味しい」と回答した人の割合)
ポイントは、トマトやタマネギ、セロリ、ブロッコリーを炒めて煮出した、カゴメ独自素材の“野菜だし”だという。「野菜だけでつくった料理は、あまりおいしくないと思われがちで、そのイメージを打破したいと会社として努力してきました。どなたでも満足いただける味わいに仕上がりました」と稲葉さん。消費者が継続的に購入しやすいよう、300円程度に購入価格を抑えられるように企業努力を重ねている。
カゴメの創業は1899(明治32)年。農業を営んでいた創業者が、当時は日本でなじみのなかったトマトという西洋野菜の栽培に挑んだことが企業の原点にある。
長年にわたり日本の食生活を見つめ、新しい食のあり方を提案してきたなかで、2016年には「2025年のありたい姿」として、「食を通じて社会課題の解決に取り組み、持続的に成長できる強い企業」と定めた。健康的でサステイナブルな食品として近年注目が高まっているプラントベースフードの商品開発も、こうした社会課題解決への一つの切り口として位置づけている。
「野菜の会社」として培ってきた技術力をいかしながら、自社開発だけでなくスタートアップ企業との業務提携にも乗り出している。2022年には、プラントベースフードのブランド「2foods」を展開する株式会社TWOと「2food プラントベースオムライス」を共同開発した。
トマトケチャップの国内シェアは58・3%、トマトジュースは63・4%を占めるカゴメ(2023年、売上ベース)。トマトを中心としながらも、さまざまな形で野菜を消費者に届けることは、健康寿命を伸ばすとともに、日本の農業を支えていくことにもつながっている。新しい「プラントベース」という選択肢の提案には、自然や地域に根ざして成長してきた会社の願いが込められている。