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ストーリーPLUS

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地域の魅力- sponsored -

ふるさと納税が農家の励みに 吉備中央町が届ける食の魅力

岡山県吉備中央町(3F-07)

「晴れの国」と呼ばれ、瀬戸内海式気候によって晴天の日が多い岡山県。吉備中央町はそのど真ん中、標高300メートル前後の高原地帯に位置している。冷涼で、昼夜の気温差が大きい気候を生かした農業が盛んで、米や果実、野菜など、自慢の特産品を数多く持っている。そんな町に活力をもたらしているのが、「ふるさと納税」というかたちで届く全国からの支援の手なのだという。

吉備中央町はこの11年、コシヒカリを返礼品としてふるさと納税に力を入れてきた。「おかげさまで大変好評で、今年の申し込みは7月中には終了していました」と笑顔で語るのは、町協働推進課主事の古谷泰士さんだ。全国から4万5千件の申し込みがあり、寄付額は10億円余り。昨年に続いて10億円を超えたが、昨年の半分の期間で早々と達成した。関東圏からの寄付が4割を占め、3割が近畿と名古屋圏からの申し込みだという。

この好調ぶりは、他の自治体から「いったい、どんな工夫をしているんですか」と問い合わせが入るほどだ。古谷主事は「天候の影響などで都市部のスーパーで米が品不足になっていることも影響していると思います」とその背景を推測している。

町の人口は1万人あまりで約5100世帯。このうち兼業農家も含めると約4分の1が米作りに関わっている。ふるさと納税のスタート当初、寄付1万円に対する返礼品を「20キログラムのコシヒカリ」としたところ、ネット情報や口コミで「日本一お得なコシヒカリ」と話題を集めた。

その後、2019年度に返礼品の価格を寄付額の3割以内にするルールができ、1万1千円の寄付につき「コシヒカリ15キログラム」に変更したが、寄付額は初年度の約1億円から年々増え続け、2021年度には11億3300万円(3万2178件)に達した。以降も毎年、全国から年10億円前後の寄付が集まり続けている。

吉備中央町では、こうした寄付を農家に還元する「米作り農家応援事業」という仕組みを設けている。寄付金を米の購入費や事務費などを除いて基金に積み立て、農機具を購入する際の補助や、イノシシなどから田んぼを守る電気柵の設置費用などにあてる。

中山間地域の町では、全国的に人口減と高齢化が進んでおり、吉備中央町も悩みは変わらない。「体の負担を減らすために田植え機やコンバインを購入したいが、一定の時期にしか使わないものにはなかなか手が出ない」というお年寄りの農家も少なくない。山際の田んぼが多いため、イノシシの被害があり、最近はシカの被害も出ている。繰り返し荒らされると「もう米作りをやめよう」という気持ちになってしまう。

全国からの寄付は、基金を通じてこのような農家を具体的に助ける手段となっている。「ふるさと納税は、農家にとって大きな励みになって、『頑張ってみよう』というモチベーションにつながっています」と事業の効果を話す。

米だけでなく、岡山県が日本一の生産量を誇る高級ぶどう「ピオーネ」も町の特産品だ。甘さと爽やかさを併せ持ち、大粒で、種がなく、独特の香りがある。昼夜の気温差が栽培に適しているとされ、町では193の事業者が栽培に取り組んでおり、新規の就農者も多い。

今年、コシヒカリの寄付者へ受領書と一緒にピオーネのチラシを同封したり、イベントで配布するなど、地道な広報活動を行った結果、7月下旬で目標に達して受付を終了した。寄付額は約700万円とコシヒカリに比べれば小さいが、協働推進課主事の大月崇行さんは「関東の方は『ピオーネ』と言ってもまだピンとこない。でも、知ってもらえれば気に入ってもらえるはず」と手応えを話す。

その他にもブルーベリーや円城白菜、自然薯、岡山のブランド牛「備中牛」など、町は自慢の特産品をたくさんもっている。大月主事は「ふるさと納税という仕組みは、こうした魅力を多くの人に知ってもらう貴重な機会。集まった寄付を通じて、農家を元気に、そして町を元気にしていきたいと思っています」と語る。