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ストーリーPLUS

interview
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終活を考える、その前に 目で見て楽しむ「塗り絵自分史」

行政書士小串滋彦事務所(1R-11)

いずれは訪れる人生の終わりのときを見据えて、残された時間にやりたいこと、やるべきことを考える「終活」。とはいえ何から行動に移せばいいかと迷う人もいるのでは?

神奈川県横須賀市に事務所を置き、市民や企業の行政手続きや困りごと解消をサポートする行政書士の小串滋彦さんは「まずは自分の人生や体験を振り返ることから始めてみてはどうでしょうか」とすすめる。それを助けるツールとして、過去のできごとや喜怒哀楽の感情をかたちにし、有意義な時間の過ごし方を考える「塗り絵自分史」というワークショップを提案している。

「塗り絵自分史」の取り組み方はこんな具合だ。生まれたとき(0歳)から現在の年齢までの時間を横軸にとり、これまでに起こった印象的なできごとや、それによって自分に起こった心境の変化を折れ線グラフで表現していく。

たとえば、受験勉強がうまくいかず悩んだ時期であれば暗い色でメモを書き、グラフは下向きに。恋人へのプロポーズに成功して幸せだったという経験なら、華やかな色でメモしてグラフは上向きに……。現在の年齢まで一本の線がつながり、思いのままの色に染まった「自分史」を眺めてみると、自分の人生の歩みが個性的に表現されていることだろう。

「どんなときに幸せを感じたか。どんなことに後悔をして、もっとやってみたいことはなにか。そんなことを整理するきっかけになればと思います」と小串さんは話す。「たとえば私の父に試してもらったところ、仕事で海外の国々を訪れていた若いころの充実感を思い出して、それが励みになって足のリハビリに前向きになりました」

ワークショップに参加する人として主に想定しているのは、終活という言葉が気になりはじめた50代以降の世代。ただ、高齢の親と今後について前向きに語り合うための手段として、子ども世代にもぜひ試してみてほしいという。

なぜ、小串さんがこのようなワークショップを思いついたのか。その背景には行政書士として力を入れてきた成年後見や遺言作成のサポートといった仕事がある。成年後見制度とは、高齢や障害などにより、財産を管理したり契約を行ったりすることが困難な人を保護し支援するための制度のことだ。

小串さんが法学を専攻していた大学生のころ、小串さんの祖母が難病に見舞われ、息を引き取るまでの数年間寝たきりのまま過ごすというできごとがあった。「成年後見の制度について勉強はしていたけれど、実際には祖母のために何の役にも立てることができなかったと悔いが残りました」

祖母のようにさまざまな事情で自分の意思を反映するのが難しい人をどうしたら支えられるのか。そう思いながら就職を考えるなか、成年後見の業務を中心に活動する先輩行政書士の話を聞く機会があり、自身もこの仕事を志すようになった。

いまは企業の許認可や補助金の申請といった業務も行いつつ、行政書士で構成されている「公益社団法人コスモス成年後見サポートセンター」に所属し、認知症の兆候があったり、親族の支援を受けるのが困難だったりする人のサポートにあたっている。

行政書士になって間もない時期、高齢の方の施設入所手続きや財産管理の支援に携わった。「その方は亡くなられたのですが、最後に私の手をとり、あなたのような人の支援が受けられて良かった、と言ってくださったことが忘れられません。その方は約半世紀ぶりに離れ離れになったお子さんと連絡がとれて、いまはお子さんのところで供養していただいています」と小串さんは振り返る。最後の時間を幸せに過ごすことは、本人にとっても、それを支える人にとってもきっと心に残りつづける思い出になる。

小串さんが「塗り絵自分史」を通じて提案するのは、今日からの人生を前向きに進むためのきっかけにすること。「そうした前向きな暮らしを送るための身近な相談相手として、行政書士が様々なかたちでお役に立てるということもぜひ知ってほしい」と話している。