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ストーリーPLUS

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ビール、スイーツに新感覚の味わい 本土最南端の町から全国へ

31℃LINE花子/Honey Forest Brewing(4E-01)

太陽がさんさんと降り注ぎ、海岸線や緑の山々が美しい。鹿児島県南大隅町は、大隅半島の最南端に位置する自然豊かな町だ。「豊かな食材やすばらしい特産品を全国に知ってもらいたい」と、町の人たちの挑戦が始まっている。

南国の気候が育んだ特産品はふんだんにある。ポンカンとネーブルオレンジの自然交配「たんかん」もそのひとつで、果汁が多くて濃厚な甘さが特徴だ。また、町内の集落に古くから自生している「辺塚(へつか)だいだい」は、国がブランドとして保護する「地理的表示(GI)保護制度」に登録されている希少な柑橘類だ。「和製レモン」とも呼ばれ、町外への苗木の持ち出しが禁止されている。

醸造所と店舗を兼ねて営業しているクラフトビール工房「Honey Forest Brewing」には、たんかんや辺塚だいだいを使ったビールが並ぶ。工房代表でブルワー(ビール職人)の相羽ゆかさんは、地元産の果物と、ご主人が自家養蜂している貴重な日本ミツバチの百花蜜を使って、香り高くフルーティーな味わいに仕上げている。

オープンは3年前。ご主人が趣味でつくる蜂蜜があまりにおいしくて、経営コンサルタントに商品化を気軽に相談したことがきっかけだった。「誰もやっていないこと。例えばビールとか」と勧められ「お土産になる!」という周囲の盛り上がりにも押されて事業化に乗り出した。各地の醸造所を見学して、大阪の講習会に通った後、宮崎県延岡市の「宮崎ひでじビール」で研修を重ねた。

ビールのブランド名は「Sun Sun ALE(サンサンエール)」。いまのラインナップは5種類で、たんかんや辺塚だいだいのほか、季節のミカン(大将季、デコポンなど)、フレッシュ小ミカン、完熟パインアップル。いずれも日本ミツバチの百花蜜を使用している。果実の甘みと酸味にハチミツのまろやかさがマッチし、香り豊かで爽やかな喉ごしだ。

2024年2月に宮崎ひでじビールから300リットルの醸造タンクを譲ってもらって生産量が2.7倍に増え、念願の県外への販売もできるようになった。醸造作業の時は友人に手伝ってもらうが、それ以外はほぼ一人でこなしている。相羽さんは「特産のフルーツと貴重なハチミツを使ったビールの味を多くの人に知ってもらいたい」と話す。

特産の柑橘類はスイーツにもいかされている。

「ここはお土産物がないねぇ」。こんな観光客の声を聞いて、カフェを経営していた「31℃LINE 花子」代表の山下淳也さんが、たんかんや辺塚だいだいでスイーツづくりを思い立ったのが6年前。納得できる商品を作るまで約3年、試行錯誤を続けた。果物をひとつひとつ手で皮をむいて、手で絞る。こうした工程にこだわったスイーツが誕生した。

「だいたんなゼリー」は、濃厚な甘さのたんかんがたっぷり入ったゼリーに、爽やかな酸味がある辺塚だいだいを使ったホイップクリームがのっている。「だいたんなショコラ」はチョコレートムースの上に、たんかんの皮でつくったジャム。鹿児島市の百貨店で開かれた新特産品コンクールに出品したところ、「新感覚のスイーツ」と評されて日本百貨店協会会長賞に輝いた。

地元の人たちが町の特産品として県外へ贈ると、その評判が良くて県外からネット注文が舞い込むようになった。カフェを切り盛りしながらではとても手が回らず、2024年6月にカフェを閉じて店頭販売する工房を新たに開設した。

オープンの目玉として「極 たんかんバウム」と「極 辺塚だいだいバウム」を新発売した。果物を手作業でペーストにして生地に練り込み、ベンチャー企業が開発したAIを活用した焼き器で焼き上げるバームクーヘンだ。無添加で、それぞれの果物の香りと味わいが楽しめる。

鹿児島市の百貨店の物産展に出したところ、2日で完売した。新工房の完成で県外からの注文にも応じられるようになった。妻の由美子さんと手作りにこだわったスイーツをつくり続ける山下さんは「本土の最南端、人口6千人に満たない町にもこんな魅力的なものがあると、ぜひ全国のみなさんに知ってもらいたい」と話す。

(伴走型小規模事業者支援推進事業 南大隅町商工会)