テクノロジーが進化を続ける一方、多くの人が仕事や人間関係、家庭などで様々な悩みやストレスを抱えている現代社会。独自の「マインドフルネス」の指導と、カウンセリング、リラクゼーションセラピーなどの事業に取り組むプラスパ(東京都中央区)の代表、荻原順子さんは、長年の活動のなかで気になっていることがあると話す。
それは年に数百件ほど受けるカウンセリングの中でも、親子関係、特に子どもとの関係に悩んで相談に訪れる母親が増えていることだ。
子どもに期待するあまり、学校や塾の成績、友達との関係などについて、つい怒ったり叱ったりしてしまう。そしてそんな自分が嫌になって悩んだり、自分を責めたりしまう。そんなことを打ち明ける親が多い。荻原さん自身も子育ての経験から、そんな親の悩みはよく分かるという。
「少子化の時代で、子どもに過剰な期待をかけてしまうことが少なくない。これまでのことやこれからのことを考えて、どうしても自分の子どもについて『こうあるべき』『こうでなければならない』というステレオタイプの価値観に陥ってしまいかねない」
そのような思考に陥ると、自分のイメージに合うように状況をコントロールしようとしてしまいがちだ。実際には子どもだけでなく周囲の状況は絶えず変化しているため、それをコントロールすることは不可能なのだが、無理にコントロールしようとすることが、自分や周囲にストレスフルな状況を生み出してしまうという悪循環につながる。
「過ぎたことにとらわれたり、起こっていないことを考えすぎたりすることから解放され、子どもの『今』としっかり向き合うこと、そしてじっくり話を聴いたり、楽しいイメージや静まった呼吸法の練習をしたりというような、マインドフルネスの小さな習慣を家族の中で積み上げていくことが大切です」と荻原さんは話す。それによって親子ともに集中力や観察力、人への思いやりを深めることを手伝いたいと考えている。
ホッとできる第三の場所
近年、マインドフルネスは、ストレスをためることなく創造的になるための物事のとらえ方として企業研修や大学の学生相談でも注目されている。
荻原さんがマインドフルネスの大切さに気づき、事業に取り組もうと思った原点は自身の体験にある。15歳の時、尊敬していた父を亡くして精神的に大きなダメージを受けた。また、結婚後の30代後半の時に体調を崩して手術を受けたが、なかなか回復せずに心身ともに不安定になり、つらい思いをした。そんな時にいつも勇気づけ、支えてくれたのが母親だった。「元気で前向きで美しい母親のプラス思考に救われた」
そんな経験から、悩み苦しんでいる人を救う手助けができればと、35年にわたって独自の発想の転換のカウンセリングや、マインドフルネスアカデミーのカリキュラムを作り指導を続けてきた。現在、プラスパの会員は約3000人となったが、「家庭でもなく、職場や学校でもなく、宗教でもない、ホッとできるサードプレース(第三の場所)を提供できれば」と考えている。
精神を整えることをサポートする商材として、自社製品のエッセンシャルオイルも販売している。ラベンダーやベルガモット、レモングラス、グレープフルーツなどの香りに包まれた空間で、若いパパやママ、子どもたちの話に耳を傾ける。
「悩みがあっても誰にも相談できない人がたくさんいる。まずはプラス思考のプロフェッショナル「プラスピスト」と話すことで『うれしい』『気持ちいい』『安心』と感じる体験をしていただきたい。そして、親も子もマインドフルネスの習慣化で思いを少しずつ整理して、誰もがもっている人間の素晴らしい能力に気づいていただけたら」と話す。